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障がい福祉と、ブランド。 CLAN NINE 真法院|品質がいいのに、なぜ売れない?

真法院|品質がいいのに、なぜ売れない?

「品質には自信がある。」
「いいものをつくっている。」
「実際に使ってもらえれば、良さは分かってもらえる。」
それなのに、なぜか思うように売れない。
事業所のブランドづくりではそんなことが起こります。
実はこれ、「いいものをつくる」だけではブランドにはならないからです。

どれだけ品質の高い商品でも、
「誰に届けたいのか」
「なぜ、その人に選んでもらいたいのか」
「その商品を通して何を届けたいのか」
ここが整理されていなければ、商品の良さはなかなか伝わりません。

今回紹介するのは、Nine Groupの就労継続支援B型事業所「CLAN NINE真法院」(以下、真法院)。
真法院が生産する「革細工」を見つめ直したとき、まさにこの課題に向き合うことになりました。

01|「革細工が売れない」ことが問題なのか?

真法院が取り組んでいるのは、野球のグローブに使われるレザーを活用した革細工づくりです。
品質の良さを強みに、これまで小中学生の野球部員を中心に多くの方に手に取っていただきました。

そんな中、
「もっと売るためには、どうしたらいいんだろう?」
という問いが出てきました。

ここでよくあるのが、
「もっと宣伝しよう」
「SNSで発信してみよう」
「ECサイトで販売してみよう」
と、すぐに「売るための方法」を考えてしまうことです。

しかし、今回真法院ではその前に一度立ち止まりました。

そもそも、私たちは何を売っているんだろう?

02|私たちが届けているものは何か?

真法院のメンバーと話し合いを重ねる中で考えたのは、商品を購入する人の気持ちです。

「なぜ、この商品を選んでくれたのか?」
「購入することで、本当は何を求めているのか?」
「真法院だからこそ、届けられる価値は何か?」

そこで、実際に商品を購入してくださったお客様に購入した理由を聞いてみました。
主なお客様は、小中学生の野球部員の保護者やコーチです。
話を聞く中で見えてきたのは、革細工そのものの品質だけではない価値でした。

「成長の機会になると思った」

商品を選ぶ背景には、子どもたちに新しい経験をさせたい、成長につながる機会を届けたいという思いがありました。真法院の革細工は、保護者やコーチを通して野球をする子どもたちの手に届いています。
その出会いは、子どもたちが革細工を手にするだけでなく、真法院という事業所やそこで行われている仕事、そして就労継続支援B型という福祉のかたちを知るきっかけにもなります。
これまで福祉に触れる機会がなかった子どもたちにとって、革細工との出会いが福祉を知る入り口になっていたのです。

そう考えると、真法院が届けているものは革細工だけではないのかもしれません。

新しいことを知るきっかけ。
できることが増える喜び。
自分の世界が広がる経験。


商品を手に取る人がその先でどんな経験をし何を得られるのか。
そこまで考えたとき、革細工は単なる商品ではなく「成長機会」という価値を届けるための一つの手段として捉え直すことができました。

03|商品ではなく、その先にある価値を考える。

届けたい価値が見えてきたら次に考えるのは、その価値をどうすればもっと多くの人に届けられるかということです。革細工を購入してもらうだけでなく、「成長機会」そのものを地域の方にも体験してもらうことはできないだろうか。

そこで企画したのが、今回の親子レザークラフト体験会です。

実際に革に触れ、自分の手でつくってみる。
「やってみたい」と思ったことに挑戦する。
うまくいかないところは、自分で考えながら工夫してみる。
そして、完成したときに「できた!」という喜びを味わう。
ものづくりを通して、挑戦することや新しいことができるようになる喜びを感じてもらうことで成長の機会を提供できると考えました。

また、今回は親子で参加する体験会です。
普段なかなかできないものづくりに一緒に取り組むことで、
「ここ、どうやるの?」
「できた!」
といった会話が生まれ、親子で一緒に挑戦し完成を喜び合う時間は、新しい発見やコミュニケーション、親子関係が成長する機会になるはずです。

真法院のことを地域の方に知ってもらうだけでなく、真法院が大切にしている「成長機会」を言葉ではなく実際の体験として届ける。こうして、今回のレザークラフト体験会が生まれました。

「革細工を知ってもらう」から「革細工を通して生まれる体験を届ける」へ。

商品そのものだけでなく、その先にある価値を考えることで新たな企画につながりました。

04|見つけた価値を、どう届けるか。

企画が生まれたら、次はそれを必要としている人に届けます。
今回、新たに取り組んだのが真法院の周辺地域へのポスティングでした。チラシの制作では、社内のデザイナーとも相談しながら一から内容やデザインを考えました。話し合ったのは、イベントの情報をどう掲載するかだけでなく、
「どんな人に参加してほしいのか?」
「チラシを見た人に、どんな体験を想像してもらいたいのか?」
「真法院のどんな魅力を伝えたいのか?」
そうしたことを考えながら、チラシの内容や見せ方を組み立てていきました。
そして完成したチラシを真法院の周辺地域へ一枚一枚届けました。

約1か月の募集期間を経て、参加者は100名近くに。
今回、特に大きかったのはその人数だけではありません。
夏休みも、真法院は普段通り事業所を運営しています。限られたスタッフ、時間、場所の中で、日々の事業所運営と並行しながら地域の親子を迎える準備を進めてきました。
そうして、参加してくださったのは真法院を知っている人だけでなく、
真法院という事業所も、就労継続支援B型という福祉のかたちも、これまで知らなかった人たちが今回のイベントをきっかけに足を運んでくれたのです。

革細工を入り口に、これまで接点のなかった地域の方々と出会う。
そして、実際に革に触れ、ものづくりを体験しながら、真法院という場所を知ってもらう。
参加者からは「楽しかった」「またやってみたい」といった声も聞かれ、好評をいただくことができました。

05|ブランドは、つくって終わりじゃない。

今回の取り組みを通して見えてきた、真法院の新たな可能性。
それは、革細工という商品そのものだけではなく、
・新しいことに挑戦する機会
・人が成長していく機会
・人と人との関わりから、新しい発見が生まれる機会
を届けられるということでした。

革細工という一つの取り組みを入り口にこれまで十分に言葉にされていなかった価値を見つけ、それをレザークラフト体験会という形にして地域へ届ける。今回の取り組みはその一歩となりました。

そして、ブランドづくりは一度価値を見つけたら終わりではありません。参加してくださった方の声や反応から次にできることを考える。新たな課題が見つかればまた工夫してみる。そうして、見つけた価値を少しずつ育てていく。
ブランドを育てることは、見つけた価値を問い直しながら形にし続けることなのです。


障がい福祉と、ブランド。

Nine Groupには、大阪・沖縄・千葉・福岡などさまざまな地域に事業所があります。それぞれの場所にそこで働く人たちの個性や強み、積み重ねてきた取り組みがあります。
同じNine Groupでも、事業所が違えば持っている強みも届けられる価値も違う。
その場所にしかない価値を見つけ、必要としている人に届けていく。

不定期連載「障がい福祉と、ブランド。」では、今後も全国の事業所の取り組みを通して、福祉の現場に眠る多様な価値や新しい可能性をお届けしていきます。 次回の更新も、どうぞお楽しみに。



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